日経広告研究所、第56回定期総会開く

2023-06-01

会報誌-広研レポート

現在の調査・研究の基本方針と現状、ならびに今後の計画を発表

活動報告

 日経広告研究所は5月25日、東京・千代田区のアルカディア市ヶ谷(私学会館)で、第56回定期総会を開催した。今回は、コロナ禍での書面開催を経て、3年ぶりの対面での開催となった。定期総会にあわせ、「広告から、興告へ。」をテーマに、シンポジウムも開催した。




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3年ぶりに総会を対面で開催


 総会では、澤田道隆理事長(花王・取締役会長)が冒頭の挨拶で、「社会、生活者が急速に変容する今、広告やコミュニケーションのあり方を継続研究している当研究所が果たす役割は大きい」との認識を示し、「生活者の情報行動と価値観の変化、社会の動きや広告活動の動向を研究するとともに、コンテンツ拡充や自主研究にも尽力し、会員に対しタイムリーに知見を共有していきたい」と語った。


 議案については3案が付議された。第1号議案「2022年度事業報告と収支決算」、第2号議案「2023年度事業計画と収支予算案」、第3号議案「役員選任の件」を北村裕一専務理事が説明し、いずれも承認された。


 2022年度事業報告の主な内容は次のとおり。


 調査研究については、その活動の指針である「4つの重点領域」(①デジタル化が進展する中での生活者の「情報行動」の動向、②広告コミュニケーションが果たす役割、③変革期における日本の広告市場の動向、④広告表現の記録とその学術資産化)について改めて説明するとともに、2022年度の調査研究実績として、広告主企業の広告活動の実態を捉えた「広告主動態調査」、有識者とともに時代を表現する広告を記録し学術資産として遺す「広告定点観測」、多様化する情報ソースに対する生活者の利用実態を調査した「生活者のメディア利用と情報価値志向に関する調査」について紹介した。また、1988年より日本経済新聞社とともに実施している「企業イメージ調査」について、蓄積した調査データをもとに最新の理論と統計分析手法を使った、企業イメージの形成要因を分析する研究が行われていることも紹介し、『日経広告研究所報』やイベント、セミナーなどを通じて今後発表していくとした。


 講座やシンポジウムについては、日本マーケティング協会と共催した「デジタル時代における事業開発論」や、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部と共催した「起業家が考える広告戦略のリアル」、毎年実施している「日経広研プレミアム講座」や「広研セミナー」など、多くの事例を報告した。


 出版活動については、『広告白書2022』や『広告主動態調査』をはじめ、『有力企業の広告宣伝費2022年版』については冊子とCD-ROM版を発行したことなど、7つの出版実績を報告した。


 事業運営については、ウェブサイトのリニューアルや、日本の第一線の広告研究者11名による広告講座「現代広告概論」をはじめとした動画コンテンツの拡充について紹介するとともに、会員社の社員が自由に閲覧できる仕組みを構築したことを報告した。また、発行物についてはオンデマンド印刷方式を採用することで、製作コストや在庫コストの削減を図ったことも報告した。


 役員選任議案については次のとおり。


 役員選任では、3年の任期を満了した副理事長の小林保彦氏(青山学院大学・名誉教授)、理事の水谷徹氏(サントリーホールディングス・常務執行役員)、専務理事の北村裕一(日経広告研究所所属)の3名が再任された。また、内山清行氏(日本経済新聞社・常務取締役)が理事に選出され、理事の平田喜裕氏(日本経済新聞社・取締役副社長)が退任した。


 2023年度事業報告の主な内容は次のとおり。


 調査研究については、2022年度の調査研究事業を継続するとともに、4つの研究プロジェクトを推進することを報告した。調査研究の重点領域としては、これまでに実施した調査データについて、最新の統計解析手法を導入し、研究者と詳細分析を進めていくことを紹介するとともに、研究結果は『所報』や調査報告書だけでなく、対面ミーティングなどを通じた、会員の実務に役立つ形での情報提供を追求するとした。



武蔵野大学と共催のシンポジウムを開催


 総会の開催後、同会場で引き続き「広告から、興告へ。」をテーマに、シンポジウムを開催した。『所報』で連載中の武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の高松宏弥准教授に企画に協力いただき、会員企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業といった、すべてのビジネスパーソンに役立つ内容となった。


 第一部では、「アントレプレナーシップと広告コミュニケーション」と称した対談形式で、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤羊一氏と同学部の教授でありコピーライターでもある梅田悟司氏が、アントレプレナーシップや広告思考が生み出す事業の転換点について議論した。


 第二部では、パネルディスカッション形式で、HASUNAのFounder & CEOである白木夏子氏と、みんなの銀行の頭取である永吉健一氏をゲストに迎え、梅田氏の進行のもと、アントレプレナー(起業家)とイントレプレナー(社内起業家)の立場から、事業成長における広告コミュニケーションのあり方について講演いただいた。



動画公開について


 2022年度活動報告と2023年度計画の説明、および定期総会後のシンポジウム動画については、日経広告研究所ウェブサイト内で6月中旬頃からの公開予定となっており、詳細はウェブサイトの「お知らせ」欄で告知します。



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