調査・研究

2019年度の広告費予測/概要版【詳細版は会員専用ページにて公開】

2019-02-08 調査 ~広告費全体は前年度と比べ横ばい。リスク要因増え、企業は慎重姿勢~

 日経広告研究所は2019年度の広告費が前年度に比べて横ばいになるという予測をまとめた。足元の国内景気は底堅いものの、米中貿易摩擦の激化や世界景気の後退が懸念される上、10月に消費税引き上げを控えて、企業は広告出稿に慎重な姿勢を取り始めている。媒体別では、新聞や雑誌、テレビなどマス媒体が引き続き弱含み、ここ数年急成長してきたインターネット広告も、個人情報の規制強化の流れなどを背景にやや伸び悩みの兆しがみられる。


 同研究所は毎年2月、翌年度の広告費予測をまとめている。経済産業省が毎月発表している「特定サービス産業動態統計調査」の広告業売上高を広告費の基本データとして使い、四半期ベースで広告費を予測している。今回は19年4-6月期~20年1-3月期を予測期間とした。



18年度は自然災害の影響が影を落とす


 18年度の広告費は0.2%減少する見通し。昨年2月時点では、国内景気は底堅さが見込まれる上、2月の平昌五輪や6月のサッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会などの大型スポーツイベント開催に伴う広告の需要増加が期待され、広告費は1.5%増えるとみていた。しかし、7~9月に豪雨、台風、地震などの自然災害が立て続けに起きた結果、西日本や北海道など幅広い地域で企業活動が停滞を余儀なくされ、広告需要も予想を下回った。


 秋からは米中貿易摩擦が激しさを増すにつれて、中国経済の減速傾向が次第に鮮明となり、中国と経済的に密接な関係にある欧州やアジアなどでも景気に対する警戒感が広がっている。海外発のリスク要因が増え、企業は広告出稿を積極化しづらくなっている。


 19年度も米中の貿易摩擦問題は容易に解消されず、世界景気の足を引っ張るのではないかと予想する声が多い。国内では10月に消費税引き上げが予定され、その影響にも注目が集まる。政府が増税対策を積極的に進めた結果、個人消費に与える影響は限定的という見方もある。ただ、駆け込み需要の増加と増税後の反動減を通じ、広告費は10月以降、若干のマイナスに陥る可能性がある。年度全体では横ばいと予測している。


 19年度の広告費を媒体別にみると、新聞広告は5.9%減と18年度よりも減少率が縮小する。4月の統一地方選や7月の参院選で選挙関連の広告需要が見込める上、5月からの新元号に伴う広告需要も期待される。雑誌広告は7.5%減るが、前年度よりもマイナス率はやや改善する。出版科学研究所によると、18年の雑誌販売金額は9.4%減と、前年の10.8%減と比べてやや改善しており、広告需要にもプラスに働きそうだ。



テレビはスポット広告の増加に期待


 9月にラグビーW杯が日本で開かれ、テレビ広告の需要増加が期待される。ただ、昨年のサッカーW杯や冬季五輪の押し上げ効果はなくなり、タイム広告は落ち込みが予想され、スポット広告でどれだけ埋められるかがカギとなる。19年度のテレビ広告は横ばいを見込む。ラジオ広告は17年度からスポット広告が減っている。一時期は法律事務所や中古車販売といった特定業種の広告がラジオ広告全体を押し上げていたが、今はその勢いがなくなっている。19年度は4.5%減ると予想している。


 インターネット広告は17年度に9.2%増と、4年ぶり1ケタの伸びにとどまったが、18~19年度も6、7%台の増加率になるとみている。不適切なサイトに自社の広告が掲載されるブランドセーフティーや、ロボットによって不正なインプレッションやクリックが発生するアドフラウドといったネット特有の問題が表面化し、企業の広告出稿意欲をそいでいる。欧州連合(EU)が一般データ保護規則(GDPR)を18年5月に適用したのに伴い、キャッシュのユーザー属性を読み込んで、それに関連した広告を配信する「ターゲティング広告」への影響を見極めようとする企業も多い。


 交通広告は19年度も安定した伸びが期待できそう。紙媒体がマイナスの一方で、デジタルサイネージを活用した広告に対する需要は根強い。交通広告を展開するJR東日本企画によると、18年秋以降、同社の売り上げはプラスに転じている。折り込み・ダイレクトメールは4.3%減と前年度並のマイナス率を予想する。折り込みは主力の流通業の落ち込みがやや改善するが、不動産などは振るわず、枚数はマイナス基調が続く。ダイレクトメールは若干のマイナスにとどまる。


 予測値は日経広告研究所と日本経済研究センターが共同で開発した「広研・センターモデル」を使って算出している。広告費の動きは国内景気の動向によって説明できると仮定し、財務省発表の「法人企業統計」の経常利益と内閣府発表の名目国内総生産(GDP)の2つを説明変数に選び、このモデルに日本経済研究センターが予測している経常利益と名目GDPの伸び率を当てはめ、予測値を算出している。テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマス4媒体や、交通、折り込み・ダイレクトメール、インターネットの各媒体の伸び率は広告費全体の動きから予測している。


※「会員専用ページ」で、四半期ごとの媒体別広告費の増減率や「広研・センターモデル」のベースとなる景気予測を盛り込んだ詳細版(PDFファイル)を2月21日(木)に公開しました。


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