調査・研究

2022年度の広告費予測/概要版(詳細版は会員専用ページで公開)

2022-02-01 調査・研究 景気回復を映し3.7%増 インターネットけん引 

 日経広告研究所は2022年度の広告費が前年度に比べて3.7%増えるという予測をまとめた。コロナ感染の収束時期は不透明だが、22年度も堅調なマクロ景気を背景に企業活動が活発化し、広告費は底堅い伸びが見込まれる。インターネット広告が高成長を持続し、全体の伸びをけん引する。



21年度の広告費は過去最高の伸び


 コロナの影響が直撃した20年度の広告費は16.1%減少した。リーマン・ショック後の09年度の13.1%減よりも悪化し、特定サービス産業動態統計で過去最大の減少率となった。21年度は一転して14.8%伸びる見通しで、バブル期だった1989年度の13.2%を上回り、過去最高の伸び率となる。


 22年度の広告費もマクロ景気の回復を背景に安定した伸びが見込まれる。エコノミストに景気先行きを聞く日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査によると、実質国内総生産(GDP)の伸び率は3.07%と、21年度の2.72%よりも高くなる(1月13日時点)。22年度の広告費は21年度のような反動増が見込めず、増加率は鈍るとはいえ、3.7%の底堅い伸びを見込む。ただ、予測通り伸びたとしても、22年度は金額で19年度をわずかに下回る。コロナ前の水準を回復するのは23年度以降となりそうだ。


 媒体別にみると、インターネット広告の成長が著しい。インターネット広告は20年度も3.6%増と媒体の中で唯一、プラスの伸びを記録していた。21年度は26.5%と急速にペースを上げ、22年度も14.7%と好調を持続する。巣ごもり需要をとらえて成長している電子商取引やゲームなどの業態は、インターネット広告と親和性が高く、新型コロナ下でも積極的に広告を出稿している。21年度に入り、大手広告会社がインターネット広告の伸びを加速している点も見逃せない。大手広告会社が得意客とするナショナルブランドにインターネット広告を利用する企業が広がっていることを示している。



東京五輪はテレビ広告の伸び押し上げ


 テレビ広告は21年度に13.6%という高い伸びを記録した後、22年度も3.1%の伸びを見込む。21年度は前年度に落ち込んだスポット広告需要が反動により急増している。東京五輪・パラリンピックはほとんどの競技が無観客で行われるなど、国民の間での盛り上がりを危ぶむ声も少なくなかったが、タイム広告には大きくプラスに働いた。22年度は東京五輪効果がなくなり、タイム広告はマイナス見通しだが、コロナ感染が落ち着けば、交通・レジャーなどのスポット広告の増加が期待できる。


 21年度の新聞広告は5.6%増の見込み。20年度の17.9%という大幅な落ち込みからの反動に加え、10月の衆院選に伴う広告需要が伸びを押し上げた。21年度は全国紙が相対的に伸びを高めたが、この傾向がどう続くか注目される。22年度は横ばいを見込む。ラジオ広告は21年度も0.2%減り、他媒体のような反動増がみられない。その分、伸びしろがあるともいえ、スポット広告の増加を見越し、22年度は0.5%のプラスの伸びに転換する。


 雑誌広告は21年度も0.5%減が見込まれる。20年度に38.1%減と大きく落ち込んだ後だけに、回復の鈍さが目を引く。出版科学研究所によると、21年の雑誌販売額は週刊誌と月刊誌の定期誌の販売低迷が響き5.4%減少した。この傾向は22年度も続き、雑誌広告も3.1%減る。出版各社が紙媒体からデジタル媒体へのシフトを進めていることも背景にある。


 交通広告はコロナ下で乗車人員が低迷し、広告と接触する機会が減っている状況から脱しきれない。ただ、20年度の35.2%減という落ち込みを経て、顧客の出稿とりやめの影響が一巡し、21年度はプラスの伸びになる月もでてきた。21年度1.3%増、22年度は3.5%増を見込む。


 折り込み・ダイレクトメールは21年度にリバウンド傾向が鮮明となり、6.5%の伸びが見込まれる。22年度も1.5%増を見込む。コロナの感染状況が落ち着けば、旅行、宿泊、飲食などの業種から折り込みへの出稿が増えると期待される。


 予測値は日経広告研究所と日本経済研究センターが共同で開発した「広研・センターモデル」を使って算出している。広告費は国内景気と相関すると仮定し、財務省発表の「法人企業統計」の経常利益と内閣府発表の名目国内総生産(GDP)の2つを説明変数に選び、このモデルに日経センターが予測する経常利益と名目GDPの伸び率を当てはめ、予測値を算出している。テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマス4媒体や、交通、折り込み・ダイレクトメール、インターネットの媒体ごとの伸び率は広告費全体の動きから予測している。


※「会員専用ページ」で、四半期ごとの媒体別広告費の伸び率や「広研・センターモデル」のベースとなる景気予測を盛り込んだ詳細版(PDFファイル)を公開しています。