ネイティブ広告の「アウトブレイン」 300超すサイトが採用

2020-08-05

会報誌-広研レポート

連載企画 「デジタルアド 次代の先駆者」

デジタルマーケティング・広告の動向、メディアの動向

 アウトブレインは主にレコメンドウィジット型のネイティブ広告枠で、ユーザー(閲読者・視聴者)の興味、関心に沿った広告を配信する会社だ。米国ニューヨークに本拠があり、世界55カ国で事業を展開し、この業態では世界最大級の規模を有する。日本でも、msnや中央紙のニュースサイト、出版社のウェブページなど、300を超す媒体社が同社の配信サービスを導入している。日本の広告事業統括の水野陽一氏に、事業戦略や企業理念を聞いた。


(主席研究員 土山誠一郎)




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――事業内容を説明してください。

「インターネット上で展開する媒体社の記事の下といった部分に、広告コンテンツを配信する事業で発展してきました。2006年にイスラエルで設立され、ヘッドクォーターは現在、米国ニューヨークにあります。日本法人は13年の設立で、国内では、ネット上の300以上の媒体社にサービスを提供しています。記事下広告を中心として、動画広告や、複数の画像で構成するカルーセル広告など、媒体社のサイト上の様々な場所で、様々な表示タイプの広告を扱っています

「弊社のサービスでは、読者一人一人の興味・関心に基づき、パーソナライズされたお勧め広告がネイティブに表示され、クリックすると広告のコンテンツが記載されたランディングページに移ります。このようなパーソナライズされた表示は広告のみならず、媒体社のオーガニックの記事にも対応しています。記事下にこのようなサービスを提供する業態はレコメンドウィジット型ネイティブ広告と呼びますが、弊社のサービスでは表示枠は記事下に留めておらず、我々はネイティブ・ディスカバリー・プラットフォームだと位置づけています」

――なぜディスカバリーと呼ぶのですか。

「ユーザーがお勧めの広告やオーガニックコンテンツと出合い、それらを読んで新たな発見=ディスカバーすることを助けるからです。面白かったとか、ためになったとか、ユーザーにとってプラスになることが重要だと考えています」


ユーザーの発見引き出す独自のアルゴリズム

――どんな仕組みを採用していますか。


「当社は『記事』と『人』の2軸をマッチさせることを重要視しています。広告を表示させる方法として、『コンテキスト』といって、ユーザーが読んでいる記事内容を読み込み、また、ユーザーがどういった人で、どういう興味・関心があるか、似た人がどういうものを見ているかなどを考慮し、キャンペーンのゴールに合わせて表示のマッチングをしていきます」


――それには技術力が必要になりますね。

「技術開発には力を入れています。グローバル規模で数百名の技術者がいます。50以上の独自のアルゴリズムを使って、マッチングの精度を高めています。興味があるだろうと予想して、適切な広告を表示し、その人にとっては知らなかったネイティブコンテンツを、雑誌でいうならページをめくったときに、『こんなのも面白いね』と思ってもらえるような内容とマッチングさせるのが、我々のサービスです」


――日本進出から7年間に300を超す媒体社から採用されたのは、そうした機能が評価されたからですか。

「当初はサービス自体が新しかったという面もあったと思います。非常に多くの広告会社、媒体社に賛同してもらい、新たなビジネスとしてスタートできました。広告主にとっても新しい形の広告であり、ブランディングの場として急速に広まりました。ただ、多くの似たようなサービスが増えた中、その中でも弊社の技術力と広告に対する考え方にご賛同いただいた結果、300の媒体社まで広がったと思っています」

「また、長期的な視点で広告環境をつくるようにしてきたのも大きいと思います。当社には、『人、チャネル、マーケターをつなぐ、意味があり、信頼性の高いネイティブディスカバリーを提供する』という理念があります。コンテンツを見るユーザーと媒体社、広告主をつなぎ、信頼性が高く、意味がある広告を提供するということで、言うならば「三方良し」的な考え方です」

「信頼性のある媒体に、ユーザーに有益な広告を出す。それをユーザーが読んで、深い知識を得られたり、内容に共感したりする。それが媒体社のブランドと広告収益にプラスに働く。そういう好循環を目指すものです。それには、ユーザーを守ることを信念として、目先の利益や反応だけにとらわれない広告サービスを提供することです。そうした考え方が、信頼性を重視する媒体社や広告主の考えと一致したことが大きいと考えています」


広告の“場”をつくるのは共同作業

――ブランドセーフティーにも強く関わることになりますね。

「媒体社もブランドを守ることになり、広告主にとっても自分たちの広告の横に、どのような広告が出るのか、それもブランドを守ることになります。双方を見ていくことによって、結果的に皆が良い環境を享受することにつながるという意味で、質の良い広告の“場”は皆の共同作業でつくるものではないでしょうか」

――そうした方針が新聞社サイトほかのネイティブ広告を扱うことにつながっていると思いますが、掲載広告の審査基準はあるのですか。

「媒体社自体に厳しい審査基準がありますが、我々も独自の基準を設けています。日本法人として審査チームを抱え、法律など日本のルールに沿っているかチェックしています。新聞社に匹敵するような審査だと思っています。配信前に目視し、薬事などは専門機関の協力も得ながら対応しています。配信中もパトロールし、不意な抵触がみられたような場合は停止するようにしています。タレントの起用に関しても、きちんと契約されていて問題はないか確認しています」


――ネイティブ広告の将来をどうみていますか。

「ネイティブ広告の価値は高まっていくだろうと感じています。自然な形でユーザーの関心を引き付けることで読まれやすくなるという面があります。また、エンゲージメントの高いユーザーがクリックしコンテンツを読むことから、しっかりとブランドをつくろうとする企業の活用が増えていくでしょう。質の良いネイティブ広告を提供することで、媒体社や、ひいてはジャーナリズムの発展の一助ともなるように尽くしていきたいと思っています」


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水野陽一(みずの・よういち)

1999年、伊藤忠商事入社。化学品部門に所属し、合成樹脂のトレーダーとして、7年間のシンガポール駐在を経て、同社退職。退職後、英国大学院留学を経てエクスペディア グループで、B2Bパートナーシップ事業の日本事業を担当。2019年4月より世界最大級のディスカバリーネットワークであるアウトブレインジャパンに入社。国内の広告主様とのパートナーシップを強化すると同時に各社の収益性、効率性向上のサポートをしている。



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